プロ野球選手の投球パフォーマンス向上のためのコンディショニング事例

プロ野球選手の投球パフォーマンス向上のためのコンディショニング事例

リアラインとの出会い

今回、リアライン・ラボに一名の侍ジャパンのメンバーでもあるプロ野球選手が来訪されました。この選手は高校時代からリアラインの製品を愛用されている方で、インソール、コア、ソックス、チェアなど、幅広い製品を日々の練習やトレーニングに取り入れてこられました。東京での試合を機に、渋谷のリアライン・ラボに足を運んでいただき、包括的なコンディショニングセッションを実施しました。


徹底的なボディケア:2時間の集中セッション

1.非利き脚の股関節の屈曲

右投げ投手の場合、左股関節の挙上(屈曲)における柔軟性向上は、投球動作の土台となる重要な要素です。特に非投球側の股関節の可動域を広げ、ワインドアップで左脚を上げるときに、骨盤や背骨に不適切な代償運動を防ぐことが重要です。仰向けで股関節を屈曲したとき、当初は90°くらいで止まってしまいましたが、ケア後には130°くらいまで屈曲することが出来るようになりました。これにより、スムーズに左脚を上げることができるようになり、骨盤や背骨の代償運動を防ぐことができるのです。

 

2.両股関節の内転筋の柔軟性

内転筋の柔軟性向上により、無理なくステップ幅を広げられるようになり、より下肢のエネルギーを蓄えることが出来るようになります。骨盤がスムーズに回転出来るようになることで、下肢の安定性が増し、下半身かrら上半身への力の伝達が効率的になります。

大腿薄筋や半膜様筋を含めて、内転筋群と触れている筋との癒着があると、膝屈曲位では十分な開排ができても、膝を伸ばすと途端に内転筋が緊張するようになります。大腿薄筋と大内転筋や半膜様筋、そして半膜様筋と大内転筋の癒着を丁寧にリリースすると、数分で柔軟性が取り戻される場合があります。

 

3.両股関節の支持性

片脚スクワットにおいて骨盤が横にブレる場合があります。膝が外反して、不安定になってしまいます。このような現象は中殿筋の筋力低下と考えられがちですが、アスリートにおいてはまったく異なる原因で、骨盤の横振れが起こるのです。これにより、ワインドパップでの投球側のバランス、非投球側の足部接地における股関節の安定性を損ねてしまうのです。

具体的には、殿部で内旋筋である小殿筋と外旋筋である梨状筋や外閉鎖筋が癒着しているために起こるのです。これらをリリースすると個々の筋の役割分担が回復し、最適な位置で股関節を安定させることができるのです、 

 

4.体幹のしなやかさ

胸郭の可動性は、投球動作の肩最大外旋時の背骨のしなりに重大な役割を果たします。胸郭が硬くなると、背骨のしなりが失われ、肩や肘に負担をかけることになってしまうのです。適切な胸郭の動きは、上肢と下肢をつなぐ要となり、エネルギーの伝達を効率的にします。

腹筋の過緊張は肋骨を硬くします。特に腹直筋の外側縁が肋骨弓に乗り上げたようになっていると、腹直筋が遠心性に活動する最大外旋時の胸郭の拡張を制限します。

腹筋群の機能分化を促すことで、体幹の安定性と可動性のバランスが整い、より力強い投球動作が可能になります。中でも腹直筋外側縁を内側に寄せるように腹直筋深層をリリースすることで、腹直筋の緊張とは無関係に胸郭が拡張出来るようになります。その結果、最大外戦時にも十分な背骨のしなりが作られるようになります。

 

5.体幹の安定性

投球時には胸郭の可動性を保ちつつ体幹の安定性を保つことが求められます。これを実現するには、腹筋群を上下に分けて、下部腹横筋は骨盤・体幹の安定化に、上部腹横筋は胸郭の可動性を保つためにリラックスさせておきます。

以下のような腹筋機能分化エクササイズを行います。

① 仰向けで両脚を股関節の真上に保ちながら、下部腹横筋のみを使ってドローインします。

② 上部腹横筋の過活動を防ぐために、胸郭を使って呼吸運動を繰り返します。

③ 上記が上手に出来るようになったら、両膝をつま先の方向に1cmずつ移動して同じ呼吸運動を繰り返します。

④ 膝を股関節の真上から10cmつま先方向に移動しても呼吸運動が出来るようになったら合格とします。

 

6.肩甲骨の可動性

肩甲骨の上方回旋不足は投球中の肘下がりの原因となります。肩甲骨の可動域改善は、投球動作における肩関節の安定性と可動性を高めます。肩甲骨を内側に引くための可動性、肩甲骨上角を下方に引き下げる可動性、そして肩甲骨下角を外側に異動させる可動性の3つがそろって初めて正常な上方回旋が出来るようになります。

これらを妨げる多数の筋肉の癒着が関与しているため、これら3つの可動性に着目しつつ制限因子となっている筋の癒着をすべてリリースして、理想の運動を作り上げることが重要です。

 

7.肩甲上腕関節の可動性

言うまでも無く肩甲上腕関節の可動域は投球において極めて重要です。外転、屈曲、外旋、内旋、水平内転、水平外転などあらゆる方向への可動性が重要となります。上腕骨頭の上方偏位が、第2肩関節の詰まり、そして炎症と癒着を引き起こします。正常な骨頭の位置を取り戻すことが重要となります。日々のコンディショニングとしては、外転において上腕骨と肩甲骨外側縁が一直線になるくらいの可動域を保つことが重要です。

肩峰下滑液包の上面の癒着をリリースし、腋窩部の拘縮を取り除かなければなりません。滑液包のリリース、腋窩部の上腕三頭筋、腋窩神経、関節包などのリリースが必要となります。さらには、腋窩陥凹の関節包内のリリースにより、肩挙上時に上腕骨頭が正常に下方に滑り込むことが出来るようになります。

8.上肢の筋肉の張り・神経の癒着

投球後に「腕の張り」に悩む線種がいます。これを放置したり、ゴリゴリと潰すような挫滅マッサージを行うと癒着がより悪化、難治化します。正しくは、上腕の尺骨神経、橈骨神経、正中神経を丁寧にリリースし、腕全体の張りを取り除き、正常な機能を向上させ、早期に疲労を脱却するために重要です。これらの神経の滑走性を改善することで、筋肉の柔軟性が向上し、より繊細なコントロールが可能になります。これは、特に変化球を投げる際の指先の感覚や、球速の調整に大きく影響します。

 

セッション後の顕著な改善点

1.投球フォームの安定性向上

ワインドアップ時の左下肢の挙上可動域、そして両脚の支持性が改善したことで、本人が思い描く理想的な下半身の使い方ができるようになりました。これにより、より力強い投球動作の基礎が作られました。これは、下肢の筋力を最大限に活用し、体全体でボールを投げることを可能にします。

 

2.力の伝達効率の改善

左足接地後の左股関節を中心とした骨盤回旋がスムーズになったことで、下半身で生み出した力を上半身に効率よく伝達できるようになりました。これにより、球速の向上だけでなく、投球時の体への負担も軽減されます。

 

3.胸郭・背骨の可動性向上

最大外旋における胸椎伸展が改善されたことで、投球時の最大外旋時の背骨のしなりがよりスムーズになりました。また、肩外転時の肩甲骨上方回旋も改善され、肩関節への負担が軽減されました。

 

4.投球動作の洗練

アクセラレーションでの上肢のしなりが向上し、早期の肘伸展を防止できるようになりました。これにより、より自然な投球動作が可能となり、怪我のリスクも低減されます。

 

オフシーズンの活用法

オフシーズンは、このような包括的なボディケアを行う絶好の機会です。シーズン中に蓄積された疲労や、気になっていた体の不調を解消し、新しいシーズンに向けて万全の状態でトレーニングを開始することができます。

特に以下の点に注目して、メンテナンスを行うことをお勧めします:
1. 疲労部位の徹底的なケア
2. 可動域の回復と向上
3. 基礎的な筋力の再構築
4. 投球フォームの見直しと改善
5. 神経系の回復と活性化

 

まとめ:継続的なケアの重要性

プロ野球選手にとって、パフォーマンスの維持・向上は永続的な課題です。定期的なコンディショニングと、適切な製品の使用を組み合わせることで、より長期的な競技生活が可能になります。今回のケースのように、高校時代からの継続的なケアが、プロフェッショナルとしての活躍を支える重要な要素となっているのです。

 

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